One and Only my shining star : Another episode

純白の盾

Shield of Innocence

機動戦士GUNDAM SEED
-- Another Side Story


Descripted by Veneficus.


Title

第一話


 ZMF-X13a イージス・アルピオーネ。
 キラを失い、アスランと一緒にプラントに帰った私を待っていたのは、この純白の機体だった。
 それは長年、機動兵器を開発してきたザフト、冠地球軌道軍事協定軍にとって、初めての高機動型宇宙戦闘機になる。
 クライン派の反乱鎮圧に駆り出されたアスランと違って、クライン派のひとりと見なされていた私は、しばらく静養と言う名の軟禁状態にあった。
 私とシーゲル様、ラクスの関係からすれば、逮捕されても不思議ではない。でも、プラントを取り巻く環境が私を守ることになった。

 アラスカでの惨めな敗北。
 失った人的資源は容易に回復しない。グングニルと呼ばれる電磁パルス弾の投入で、からくもパナマを陥落させることはできたが、地球上に薄く広く展開している現状では機動兵器の開発についに成功した地球連合軍の反攻作戦を食い止めることはできないだろう。
 来たるべき軌道上の制宙覇権をかけた戦いに備え、使える人材を軍自らの手で減らすわけにはいかない。
 加えて、ラクス・クライン、プラントにおける平和の象徴とも言える彼女が反体制活動の挙句、新造艦エターナルを強奪、プラントを脱出してしまったことも、私に有利に働いていた。ザフトではラクスの行動を何者かにそそのかされた謀略と位置付けている。その友人であり、ザフトの英雄、滑稽なものだ、である私を拘束しつづけることは市民の疑念を招くことになる。
 そもそもオーブでの捕虜返還まで約ひと月に渡り地球連合軍の捕虜になっていた私がどうやってラクスの手伝いをできるというのだろう。
 もっとも、疑うことが商売の人達にしてみれば、それすらも私が伝書鳩を行う隠れ蓑になるらしい。
 ばかばかしい。
 シーゲル様が反政府活動、最近のプラントでは外交工作をこう呼ぶらしい、を行い、ラクスがそれに深く関わっていたとしても、ラクスは決して私にそれを悟らせようとしなかった。
 ラクスは知っていたのだ。私に和平工作を委ねたらどうなるか。
 きっと私は全てをぶち壊して笑っていただろう。
「コーディネイターもナチュラルも、みんな死んでしまえばいいのよ」
 それが私の本心だった。
 パパを馬鹿にして死なせたプラントも、パパを殺したナチュラルも、何もかもが憎かった。悔しかった。
 あのころの私。
 何も知らない怖がりな私。
 世界か私かどちらかを選べと聞かれたら、深く考えずに、自分を選んだろう、幼かった私。
 今の私には、選べない。
 だって、この世界には。

 キラがいない。

 キラがいないこの世界で、私はなんでまだ生きているんだろう。



 そんな風に思いながら、漫然とした日々を送っていた私にザフトが出頭を命じてきた。これまでの軟禁状態をおべんちゃらでごまかす小役人達。
 ザフト、軍といってもしょせんはお役所だ。
 紅の撃墜王に対する扱いに憤慨して見せおべんちゃらを並べる。あまりの持ち上げぶりにしばらく誰のことをいっているのかぜんぜん気付かなかったほどだ。
 ばつが悪そうに取り繕うと、彼らは私に新鋭機のテスト・パイロットを命じた。
 どうでもよかった。
 淡々と命令を受諾する私に気を抜かれたのか、配属通知を手渡すと、彼らは早々に立ち去った。
 あとから聞いた話では、アスランにも逃げられたらしい。その話を聞いたとき、私は思わず吹きだしていた。
 歌姫に逃げられ、貴公子に見捨てられ、この国はいったいどこへ行こうと言うのか。

 今思えば、ずいぶんすさんでたんだと思う。
 面接した武官の中には私を前線に戻すことに反対した人も多かったと聞く。でも、潜在的反乱分子である私にプラントに残ってもらうより、戦死して欲しいという要望のほうが強かったようだ。
 この機体を私に提供したのは、ザフトに残った最後の良心なのかもしれない。

 イージス・アルピオーネ。
『光り輝く盾』の名を持つこの機体は名前の通り純白に塗装されていた。その繊細な機体のラインを引き締めるように赤が細く伸びる。
 私が搭乗すると聞き、急ぎ塗装しなおしたってこと、嬉しかった。

 兵器は好きじゃない。

 それがキラを殺した機動兵器なんて持ってのほかだ。でも、そのときは、こんな心遣いが嬉しくて、思わず私は涙を流していた。
 突然泣きだした私をみんなが慰めてくれた。みんな一生懸命で、女の子の扱いなんか、ぜんぜんなってなくて、でも、優しかった。



 アルピオーネはこれまでのザフトのMSと違い、機動力をあまり重視していない。
 それよりも、加速力と原子炉を搭載したことによる豊富な出力、そして、ザフトの最高機密であるNJCによる通信・管制機能を重視していた。
 前線指揮機として必要な性能を盛り込んだ。
 それがこのアルピオーネだと、戦死したニコルのパパ、ユーリ・アマルフィが説明してくれた。
 わたしはニコルの死をアークエンジェルで知った。
 膝を抱えて泣いていた、キラから聞いた状況をニコルのパパに話した。
 もしかしたら、恨まれるかもしれない。そう思いながら、話した。
 キラとアスランは友達で、キラは戦争が嫌いで中立国のコロニーにいて、わたしたちがそのコロニーを壊して、生きるために戦って、アスランをかばったニコルをキラが殺した。アスランはキラの友達を殺して、キラを殺して、キラを探してわたしはプラントに帰ってきた。
 ニコルのパパはわたしの話しを最後まで黙って聞いてくれて、ひとこと呟いた。
「やりきれないね・・・」
 わたしは肯くしかできなかった。



 イージス・アルピオーネは素晴らしい機体だった。
 確かに宇宙機としての設計が強く、機動力ではジンやシグーといった旧世代の機動兵器にすら劣るだろう。
 しかし、核電池の豊富な電力によって維持されるフェイズ・シフト装甲、指揮管制のための強力な通信・探査能力、月軌道といえど広大な宇宙空間で最大20機までの目標追跡能力を備えたポケット戦艦とも言うべき機体だった。管制能力では友軍機の識別信号を利用するため、100もの大台に乗ることになる。そして、後方の旗艦にデータリンクすることで、その指揮を中継することすら可能だった。
 正直に言おう。
 わたしはこの機体にすっかり惚れこんでしまった。
 兵器は嫌い。
 それがキラを殺したイージスなんて、なおさらだ。
 でも、わたしはアルピオーネの凶悪なまでのスタイリッシュさに、すっかり骨抜きだった。
 ザフトはわたしにこの機体を操るために必要な全ての知識を詰めこむようだった。
 電子戦、航宙管制、航宙機指揮、艦船の指揮まで、わたしが参謀職なんて関係ないと捨てていた知識まで、これを機に詰めこまれていた。
 そして、ザフトの、プラントの人材の薄さに絶望した。



 ザフトの基本戦略は攻勢防御だ。
 地球圏に比べて人口の少ないプラントには多方面での作戦行動は耐えがたい。
 すでに、オペレーション・ウロボロスのアラスカにおける歴史的大敗の段階で、地球圏での作戦能力は限界に達している。パナマ侵攻が、地球圏におけるザフト最後の勝利になることは目に見えていた。
 だが、それはザフトに、プラントに未来がないことを意味していない。戦場が地球上から新たな場所に映っただけなのだ。
 わたしはアルピオーネはその新たな戦場でザフトの優位を保持しつづけるための機体だと確信していた。
 アルピオーネの想定戦場。
 それは、中高度衛星軌道以上での運動戦だ。もとより、アルピオーネは重力圏内での機動を想定していない。形状は元より、追加装備であるミーティア・レドーム、そして、アルピオーネを最強の盾足らしめるドラグーン・システムが最も威力を発揮するのは、端末たるシールド・ドラグーンを十二分に機動させる無重力空間であるからだ。
 アルピオーネが搭載したドラグーン・システムは先に完成したZGMF-X11 プロヴィデンスと異なり、純粋な防御用だ。
 通常はシールドとしてアルピオーネを守り、必要に応じてわたしの意思を感知して飛び出し、敵の攻撃を吸収する。
 プロヴィデンスのような攻撃型のドラグーンは攻撃意思の集中と散布範囲の分散が制御を困難にするが、アルピオーネは自分を守るという意思が明白でより制御しやすいものだって説明を受けた。
 だけど訓練が始まってすぐに、そんなこと間違っているってことを思い知った。確かに標的にめがけて散布するのではなく、ひとつひとつを制御するならプロヴィデンスのほうが困難なのかもしれない。
 でも、シールド・ドラグーンはチェスに近い。
 ううん、むしろアメフトのような戦術性を求められていた。
 母艦をベースに全域的な情報を求め、オフェンス、ディフェンスに使える機体を集め、フォーメーションを指定して敵のアタッカー、ブロッカーを食い止める。そして、それらの駒を貫いて指令塔を狙う敵機を食い止める、最後のアイアン・シールド。
 それがイージス・アルピオーネを守るドラグーン・システムだった。
 そんな訓練に明け暮れる日々の中、オーブが地球連合の攻撃を受け陥落したと知った。
 オーブはキラの故郷。御両親が健在だと聞いていた。
 わたしはまだ、キラの死に様を報告できていない。



 あの娘は大丈夫だろうか。
 金色の髪をしたオーブの王女。第三国経由でプラントに亡命したという話しも聞かない。
 オーブ戦は激しいものだったと聞く。
 彼女はその戦いの中、戦死してしまったのだろうか。
 キラのように。
 地球軍によるオーブ侵攻は別に珍しい話ではない。軍事的要地にある中立国が攻撃受けるのは、フィンランドやデンマーク、アイスランドの例を上げなくともよくあることだった。
 オーブにはマス・ドライバーがある。
 その一点を持って攻撃の対象となりうる。陸戦で言う橋の確保にあたるから。
 ザフトが同盟を申し出たらしいが、断られたらしい。潔癖なものだ。小国にしては寝技が苦手だったのだろうと、思う。
 ザフトにとって幸いなことに、オーブはマス・ドライバーを自らの手で破壊したらしい。パナマはザフトの攻撃によってすでに陥落している。これで地球軍の侵攻ルートはカーペンタリアただ一箇所に集約される。カーペンタリアには最低限の守備隊を置いて、地球上に展開していた戦力を回収するチャンスだった。
 そのころには、わたしのイージス・アルピオーネへの機種転換訓練もほぼ終わっていた。おそらく、小隊規模の部隊を率いて亜宇宙圏の覇権を守ることになる。
 調子がいいもので、わたしは早く自分が派遣される部隊が決まらないか、わくわくした気持ちで待っていた。
 軍司令部に出頭を命じられたとき、わたしは久しぶりに赤の制服に身を包んだ。アルピオーネでの訓練中は、Tシャツにホットパンツ、その上につなぎを羽織る程度だったから、久しぶりの「赤」は少し窮屈だった。
 ・・・体重は増えてないから、大丈夫よね?


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最終更新 $Date: 2004/07/20 12:14:39 $
文書 $Revision: 1.2 $