It's not all, but... One and Only my shining star!
Episode 1:3


機動戦士GUNDAM SEED
-- Another Side Story
Ring for awakening...

Descripted by Veneficus.


目醒めの音


 平和な街だった。
 酩酊したような奇妙な浮遊感を覚えながら、地球連合軍大西洋連合軍少尉ナタル・バジルールは人々の生活するざわめきに、いらだたしさを感じた。
「地球ではあのぐらいの年齢の子供達ですら銃を取っているというのにな」
 無邪気に笑う少女達の間をすり抜け、エレカーを拾う。
「まったくです。戦時だというのに」
 ノイマン伍長が上官のいらだたしさに同意する。ナタルは表情をサングラスで隠して車を出した。
 八つ当たりであることはわかっている。この国の指導者はコーディネイターを受けいれることで、今回の戦火を回避することを明言していた。むしろ、自分達地球連合の指導者達が敵を甘く見すぎていたのだろう。
 戦前の見積もりでは局所戦では勝てないかもしれないが、戦略的に敗北はありえない、というところだった。
 もちろん、現在でもその見積もりは変わっていない。かつて戦場で不敗を誇ったハンニバルを追い詰めたローマ軍のごとく、地球連合はザフトを地球から叩き出す。
 これは確定した未来だ。
 問題となったのはニュートロン・ジャマーだった。
 条約違反の農業プラントを建設したプラントに対して行われた見せしめの核攻撃。その報復として地球各地の地殻奥深くに高速中性子線の速度を劣化させるニュートロン・ジャマーが打ち込まれていた。原子力発電を抜きにエネルギー資源の枯渇した地球圏では工業力を維持できない。
 わずかに算出される化石燃料は、燃やすよりもプラスチックや化学繊維など素材として必要とされていた。
 先進国などではD-D、D-T融合炉が普及しており、大規模な遮蔽を必要とせずにエネルギー生産が可能だったが、それ以外の国では電力不足による停電やインフラの崩壊から、国としての機能すら維持できない可能性すらあった。
 ザフトの報復は核戦争のほうがましという状況を作りつつある。
 もし、なんらかの技術的進展でNJを排除できた場合、各国の国民はプラントに対する核攻撃を熱狂的に支持することだろう。プラントはすでに戦争計画に失敗しているとしか考えられなかった。
 そんな国家が望むのはたいてい国家的自殺行為だ。革命家にはインテリが多い。なまじっか外の世界を知るが故に、悲惨な自分の今を受け入れることができない。
 自分達が滅ぶなら世界もろとも。
 優秀を自認するコーディネイターがそう言いだす前に戦争を終わらせなければならなかった。


 ゴムが焼けるようなきつい匂いに、朦朧とした意識が覚醒させられる。
 ナタル・バジルール少尉は端正な顔をしかめてゆっくりと目を開ける。暗い。何かがはぜるような音。目をつく煙の刺激に涙がこぼれた。
「クッ・・・」
 無重力に漂う目の前のものが誰かの身体の一部であったことに気付いて、目をそむける。
 何のものとも知れない断片が漂うなか、ナタルは後方を振り向いた。上官達が待機していたガン・ルームは灯りが絶え、通路には遠くの爆発音が微かに響いていた。
「アーク・エンジェルへ・・・」
 最後に受けた指示を口の中で繰り返す。切れてしまいそうな何かを感じながら、ナタルはただひとつの希望のように暗い通路を辿り始めた。



「ハマナ! ブライアン! 早く起動させるんだ!」
 抱えた自動小銃の引き金を引きながら、マリュー・ラミアス地球連合軍大西洋連合軍技術大尉は叫んだ。
 状況は刻一刻と悪化していく。焦りと共に照準で敵を追う。だからだろうか、周囲への警戒が薄くなっていたのは。
「危ない、後ろ!!」
 甲高い少年の声に、まず身体が反応した。
 振り返りざまに身をかがめる。
 キャットウォークを回り込んだザフト兵の構えた銃が火を噴いた。銃弾はマリューが先ほどまで伏せていた位置を通り過ぎる。慌てて銃を向けて引き金を引き絞るが引き金を引いても銃弾が出る様子はなかった。
 ジャムか。
 敵兵はそのまま姿を隠した。
「さっきの子、なんで?」
 マリューは声がした方を振り向いた。先ほど駆けていった少年がまだ避難していなかった。マガジンを抜いて確認する。使えなくなった銃を投げ捨て拳銃を抜いた。
 すぐそばで部下が銃撃に倒れる。マリューは飛び出して今、部下を撃ったばかりの敵兵を下がらせる。
「来い!!」
 マリューは階上の少年に叫んだ。もう、避難するシェルターはない。少年を保護するには一緒にX105に乗せるしかなかった。
「左ブロックのシェルターに向かいます。お構いなく!」
「あそこはもう、ドアしかない!」
 少年が向かおうとしたシェルターはどちらのものとも知れない流れ弾で吹き飛んでいた。
 戸惑うように立ちつくす少年を新たに発生した爆発が決断させた。階下へ降りようと回り込む少年をマリューは呼んだ。
「こっちへ!」
 拳銃を構え機動兵器の上を走り抜ける。その目の前で、少年がキャットウォークから飛び降りた。3メートル以上もある高低差をものともしない少年の身体能力にマリューの反応が止まった。


 キラは身をかがめると、格納庫2階の回廊を走った。下の銃撃戦は収束しつつあるようだ。ちらりと視線を投げる。地球軍の作業員達は機動兵器周辺に集まっていた。
 ふと、視界の隅で何かが動いた。すぐさま身を臥せ確認する。緑色のノーマルスーツを着た人影が自動小銃の狙いをすませていた。
「あぶない! 後ろっ!!」
 思わず叫ぶ。機動兵器の影で銃をかかえていた作業員が慌てて振りかえった。と、同時に引き金を引いて、ザフト兵の頭を下げさせる。
 驚いた表情がキラを視界に捉えた。ウェーブのかかった長い髪の女性が、困惑した表情で彼を見つめていた。が、すぐにその表情はひとつの決断を下した。
「来い!」「おかまいなく」
 手を振って声を上げる女性にキラは拒絶で答えた。地球軍の戦争に巻き込まれたくなかった。
「反対側のシェルターに行きますから」「あそこはもう、ドアしかない!」
 どちらが放ったものとも知れないミサイルがシェルターと避難していた人々をまとめて吹き飛ばしていた。
 つかの間の逡巡。
 キラは金属の橋をかけぬけ、ひらりと三メートル近い高さから、宙に身を投げだした。


 一発の銃弾に、赤い軟質宇宙服を着ていた長身の身体が弾かれ泳ぐ。
「ラスティ!!」
 停止していた認識が現実に追いつき、アスラン・ザラは叫んだ。
 たぶん、勢いこんで突出したところを狙われたのだろう。エリートの証とも言える『赤』は目立つ。集中する銃撃を引きつけて味方の攻撃を支援する。その役割をラスティは忘れたからだ、と、冷静な認識が頭のどこかで囁く。
 そしてまた、アスランは奇妙な安堵を感じていた。
 そう。あの少女でなくてよかった。
 一瞬浮かび上がった想像。赤い髪の少女が銃弾を受けて倒れる姿。
 振り払うようにアスランは頭を振った。どこからともなく聞こえる、ラスティなら死んでいいのか、という皮肉じみた囁きに怒りで身体が熱くなる。
「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!」
 キャリアの影から身を乗り出して銃を向ける。引き金を絞る指先の向こう、灰色の作業員らしき男が踊るように身体を震わせ、倒れた。


「ハマナ!!」
 マリュー・ラミアスのそばで機動兵器の起動準備を行っていた隣で援護してくれていた部下が銃弾に倒れた。その叫び声に反応したのか、赤いノーマルスーツが振り返りざまにサブマシンガンを乱射する。マリューの周囲に跳弾で金属の弾ける悲鳴が溢れた。
 最初に感じたのは熱。灼熱の熱さに次に衝撃を感じて上体が泳ぐ。視界のすみに先ほどの少年が駆け寄るのを見た。


 キラの目の前で先ほどの女性が銃弾を受けてうずくまった。キラは慌てて駆け寄る。彼女は右肩を押さえていた。命に別状はない。キラはその認識に、ここが戦場であることを忘れてほっとした。
 その時だった。
 背後から駆けてくる気配を受けてキラは振りかえった。
 目に映る。
 ナイフを振りかぶり駆けてくる赤いノーマルスーツ。遮光フィルター越しに見るザフト兵の殺意の表情が、顔を上げたキラを見て驚きに目を見開いた。
「アス・・・ラン?」「キラ…!?」
 唇からこぼれた互いの名に、旧友との再会を知った。



 フレイ・アルスターは地上から放たれる地対空ミサイルを余裕を持った機動で回避した。ミサイルは近接信管を作動させるまでもなく、フレイのジンを見失って迷走する。
「コロニー内でッ!」
 舌打ちひとつ。フレイは迷走するミサイルをスコープに入れると、2点射で撃墜した。これでコロニーのどこかを誤射することはない。
「ミゲル、そっちはどう?」
 電子妨害の影響が低いコロニー内で、無線を開いた。先行して地上部隊の援護をしているミゲルが軽い口調で答えた。
「こっちも簡単なものさ。アスランたちが遅れてるのがちょっと気になるけどな」
「アスランなら大丈夫でしょ」
 スクリーンの向こう、次第に大きくなるモルゲンレーテの工場でフレイは大きな爆発が起きるのを見た。その煙を振り払うように、2機の機動兵器の影が動く。
 フレイは肩をすくめた。
「ほら。・・・これなら外の制圧のほうがおもしろかったかも」
「ハハハ、だから言っただろ。フレイが出るような作戦じゃないってさ」「あら、わたしは作戦に私的な感情を絡めたりしないの」「くっくっく、アスランも苦労するよ」「もう!」
 フレイはミゲルのかる口につきあいながらも、スクリーンに映し出されるコロニーを油断なく見まわす。対空砲火は激しいものの、統一した指揮が取れていないこともあって意識するほどの密度ではない。わざわざ潰して回ることのものでもないだろう。
 スクリーンの中、ミゲルのジンがあの地球軍の機動兵器に駆け寄る様子が見て取れた。
「ほんと、たいくつ・・・」
 爆炎と砲火の中、つまらなそうにフレイはぼやいた。




あとがき
 今回は音声多重無しです。つぎはようやく再会やね。
 カタツムリのような遅さですけど続いてます。であであ。