It's not all, but... One and Only my shining star!
Episode 1:0


機動戦士GUNDAM SEED
-- Another Side Story

Remains of dreams...

Descripted by Veneficus.


平和の夢蹟


 ナスカ級高速戦闘艦ヴェサリウスは早期に慣性速度を同調させると、慣性航行で慎重に標的に接近していった。
 その航路の先には、一基のスペース・コロニーがあった。
 研究学園都市ヘリオポリス。
 中立国であるオーブに所属するこのコロニーは地球連合とプラント間の戦争にも巻き込まれることなく、平和を謳歌していた。
 ザフト、冠地球圏軍事同盟でトップガンの証と知られる赤の制服をまとった一人の少女が無重力に赤い髪をなびかせてブリッジに入った。
 開く扉に、仮面の男――この二隻の戦隊を率いるラウ・ル・クルーゼとヴェサリウス艦長アデスは見つめていた宙域図から顔を上げた。
「ねぇ、攻撃準備って、どういうこと? ここは中立国でしょう? こんなところで戦争を始めるつもりなの!?」
 長く赤い髪をポニーテールに結った少女が声を上げる。
 艦長のアデスは諌めようと少女を振りかえった。それを片手を上げてクルーゼが止める。もの問いたげなアデスを横に、クルーゼは作戦卓まで漂ってくる少女を待つ。
 少女、フレイ・アルスターは近くにいた乗員に床に引き寄せてもらうと、礼を言ってマジックテープの付いた無重力靴を床に張りつけて作戦卓の傍らに立った。
「不満かね?」「当たり前よ。これ以上敵を増やしてどうするの」
 作戦卓に映し出されているヘリオポリスの見取り図にフレイは眉をひそめた。
 この男、やる気だ。
「プラントは中立国から食料の輸出を受けているわ。中立国との関係維持はザフトにとっても優先項目のはず。軍事物資の提供や便宜供与という意味では、プラントも利益を受けてる。連合の兵器開発とお互い様だわ。
 ここで中立国の国境を侵す必要性は認められないでしょ」
 フレイの言葉を吟味するようクルーゼが腕を組んで顎に手をやる。フレイはこの男のむやみに芝居がかったところが嫌いだった。
 これってもしかして同族嫌悪って奴かしら。
 内心、思う。しかし、彼女はその考えをすぐに振りきった。今は、戦争のことが優先だった。
「君はお父上に似て聡明だな」
「あなたが、それを言う!?」
 フレイは父のことを思いださせるような言い方に怒りすら覚えた。しかし、仮面の奥に表情を隠した男は気にする様子もなく続ける。
「お父上を守れなかった私に君が不安を抱くのはわかる。だが、もう少し信頼してもらいたい」「そんなことっ!!」
 フレイの右手が作戦卓を強く叩く。
 その時、再び、艦橋への扉が開いた。少女と同じくザフトの赤を着た四人の少年達が勢いよく飛び込んで来た。
 艦長席でアデスは顔に手を当ててため息をついた。
「おい、フレイ! お前が隊長に意見するなど、10年早いんだよ!」「10年たったら、いい女になるよねぇ」「すみません。止めたのですが」
「フレイ・アルスター、決定はすでになされた。今は戦闘待機中だぞ」
 黒い髪にある種の決意をした者のだけが持つまなざしの少年がフレイに声をかけた。
「アスラン・・・」「クルーゼ隊長。規律を乱し、申し訳ありません」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよぅ・・・。って、あんたドサクサにまぎれてどこ触ってるの!」「っぐぁっ!」
 黒い肌に金色の髪が映える男性がフレイを後ろから抱きすくめ顎にエルボーを食らってのけぞった。
 その様子に露骨に怯えながらも、淡い緑色の髪の少年がフレイをなだめにかかった。
「ディアッカさんはそんな意図があったわけではなくて・・・」「おまえ、その胸、ほんとに15かよ」「あるじゃない!」「あちゃ・・・」「Nohooooo・・・」
 ディアッカ・エルスマンの余計な一言に、ニコル・アマルフィは柔らかな表情をしかめた。顎をさすって仰け反るように逃げようとするディアッカに、追い討ちをかけるべくフレイのこぶしが迫った。
 だが、そのこぶしはディアッカの顔を捕らえる前に伸びてきた手に止められた。
「イザーク!」「ふぅ、助かった」
 銀色の髪を短くおかっぱに切り整えた端正な顔の少年が、そのままフレイの腕をねじり上げると、肩を軽く押してフレイを艦橋への扉に突き飛ばした。
「ディアッカ、いつまで茶番に付き合っている。ニコルもだ」「イザークさん、女性に対してそんな扱いは・・・」「クッ」
「そいつ自身が女性扱いを望んでないんだろう。
 ・・・アスラン、あとは任せたからな」
 イザーク・ジュールは怒りをこめた目で彼を見つめるフレイに視線を戻した。ディアッカもやれやれと肩をすくめると、フレイにドアを指し示した。
 一瞬、かっとなったフレイだったが、こちらを見る彼らの表情が真面目なものとなっているのを見て取ると、ふんと可愛らしく鼻を鳴らして艦橋から出ていく。それを見送って、イザークは小さくため息を付くと、クルーゼに一礼して退出した。ニコル、ディアッカもそれに続いた。
「申し訳ありません」
 アスラン・ザラは背筋を伸ばして、詫びた。
「作戦直前にこのような騒ぎを起こしてしまいました」
「なに、気にすることではない。我々は総意で動いているのだから」「ですが・・・」
 口篭るアスランに、クルーゼは薄い笑みを浮かべた。
「君は知っているかね?
 アルスターの御息女は開戦前まで、ここヘリオポリスのカレッジに入学する予定だったのだよ」「・・・聞いたことはあります」
 アスランはかつてクライン議長の屋敷を訪れたとき、あの赤い髪の少女がそう言う話をしていたことを思い出した。
「春が来たら、中立国オーブのカレッジに留学すると」
「では、彼女の心情も理解してあげたまえ。彼女にとって、このヘリオポリスとは来ることのなかった平和の証なのだ。
 はからずしも、それに銃を向けることとなる。やりきれまい」
「はい・・・」
 クルーゼの言葉にアスランは視線を落とした。だから、アスランはクルーゼが嘲笑するように口元に笑みを張りつけていることに気付かなかった。
「フレイ・アルスターにはザフトのためにもまだまだ戦ってもらわなければならない。
 今回の襲撃メンバーから彼女を外すよう配慮するとしよう」
「はっ、お気遣いありがとうございます」「ウム。では、待機に戻りたまえ」
 アスランはクルーゼに敬意をこめて敬礼すると、艦橋を辞した。
 その姿を見送って、クルーゼはぽつりと呟いた。
「他愛のないものだな」「は?」
「なに、ヘリオポリス守備隊に少しぐらいの手応えを期待したいのだよ」
 いぶかしげなアデルにクルーゼは手を振って答えて見せた。
「私は、手応えのない方がよいですが・・・」
 実直なアデスの言葉にクルーゼは曖昧に頷いた。



「まったく、いったいどう言うつもりだ!
 貴様ごときがクルーゼ隊長に意見とはな」
 パイロットの待機所で、無重力に身を委ねているフレイ・アルスターに、イザーク・ジュールは腕を組んで言い放つ。
 フレイはイザークを一瞥する。
「別に。わたしはただこの作戦の必要性に疑問を感じただけだわ」「ヒュー、おまえ、作戦本部付きの方がいいんじゃない?」
 後方に戻れとばかりに嫌味に口笛を吹くディアッカ・エルスマンを後目にフレイは突入部隊と打ち合わせをする。赤いパイロット・スーツはまだ着ない。支援に回ったミゲルと通信機の調整をして互いに突入の手順を繰り返し確認する。
「フレイ、話がある」
 アスラン・ザラが彼女に声をかけたのは、パイロット・スーツに着替え更衣室から出てきたときだった。
 フレイはアスランに連れ立ってラスティがいるのに首をかしげた。支援に回るはずの彼はもうモビル・スーツへの搭乗を始めているはずだった。
「あら、なに? ラスティまで一緒に」
 ラスティはフレイの方を少しばつが悪そうに見ると、髪をかきあげた。
「ああ、実はな・・・」「フレイ・アルスター、君は今回支援に回ってもらう」
「え?」
 フレイはとっさに何が言われているのか理解できず、きょとんとする。
 そこにアスランが言葉を続けた。
「君にはラスティと交代で、ミゲルと一緒に支援に回ってほしい」
「な、なんで!?」
「君は冷静さを欠いている。この状態で突入班を任せられない」
 静かに諭すようにアスランが告げる。フレイは拳を握った。
「それはクルーゼ隊長の指示?」「いや、俺の判断だ」「!!」
 フレイは顔を臥せて顎を強くかみしめた。
「先遣隊が制圧後の突入になる。ジンの用意をしておくといい」
「・・・大丈夫さ。紅の撃墜王を出すほどの任務じゃない」「・・・・・」
 気落ちしたのかと、ラスティがフォローする。フレイの肩が細かく震えていた。
「あんな奴に! 丸めこまれて!!」
 激発する。
 フレイはキッと顔を上げると沈痛そうな表情のアスランに叫んだ。びっくりしたようにアスランが目を丸くする。
「少しは自分の頭で考えなさいよ! 言われた言葉を鵜呑みにして! アスラン、あなた命令だったらわたしやラクスでも殺す気なんでしょ!?」
「・・・」「おい、フレイ」
 ラスティが間に入る。フレイはその身体を押しのけようとするが、果たせず、上体を崩した。
 フレイは反動で宙を漂う。
 思わず伸ばしたアスランの右腕がためらうように止まった。
「・・・これは決定だ、フレイ。君は君のなすべき責務を果たせ」
「!!」「おい、アスラン」
 アスランはそれだけ言うと、背を向けた。
 彼やラスティたち潜入班は先行して出撃する必要があった。いつまでもフレイひとりにかまけている訳にはいかない。
 宙に浮かんだまま、強く、強く唇をかみしめるフレイを残して、彼らは戦場へ足を踏み出した。
 その後ろ姿を、じっとフレイは見送るしかなかった。



あとがき

 今回は音声多重でお送りしています。シリアスばっか書いてると、ギャグに奔りたくなるのはお約束と言うことで(笑)。
 最近はおんにゃのこアスランがマイブームです。
 あんま、進んでないですが、進みません。こっちは本編と違ってぶちぎれフレイ様おしり振り振りラブラブ路線なので、そっとしておいてください。
 であであ。